「オオカミの声が聞こえる」という現在のアイヌのあり方を考えさせられた1冊

北海道生活

今回取り上げる「オオカミの声が聞こえる」。

このオオカミは北海道にいたエゾオオカミのことを取り上げています。

 

最初は北海道に関するストーリーが書かれているなという軽い気持ちで手にとったのですが、いざ読み始めるとフィクションでありながらも、色々と考えさせられる話でした。

ずいぶん前に読んだものですが、最近過去のものを整理していてら出てきました。

当時のことを思い返しながらまとめてみました。

 

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「オオカミの声が聞こえる」とはどんなストーリーなのか

出版された当時、公式にリリースされた本書の内容は次のように説明されていました。

北の地を離れ都会で暮らしていたアイヌの女性マウコ(舞子とかいてマウコと読む)は、あるとき自分のアイヌとしての自分を取り戻し、生きていく道を探すために北海道に戻る。図書館や博物館を巡っているうちに、100年以上も前に絶滅したエゾオオカミの剥製から見つめられ、何かのメッセージを感じて、行動に移すのだが・・・。その助けを呼ぶ声に導かれ、一人の女性が自身の中にあるアイヌスピリットを呼び覚ます。

舞台は現在の日本です。

北海道の歴史を語るにあたり、アイヌの存在なしに語るわけにはいきません。

しかし過去から現在に至るまで、アイヌのあり方については様々な問題を抱え、現在に至っております。

過去の出来事などについてはよく取り上げられますが、現在のアイヌの状況についてはそれほど大きく取り上げられることがありません。

私自身も現状はどうなっているのかをあまりよく知りません。

「オオカミの声が聞こえる」は現在に生きるアイヌがどのような境遇に置かれているのかを知るきっかけとなる1冊といえます。

 

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「オオカミの声が聞こえる」のブックレビュー(感想)

「オオカミの声が聞こえる」を読んだ感想についてまとめました。

 

読み終わったあとに感じたのは、本当のところはわかりませんが、昔ほど露骨でないにしろ、アイヌに対する差別が根強く残っているということでした。

今では少数民族となってしまったアイヌの人々の苦悩も感じられました。

 

本書では、アイヌの伝統を守り続ける祖母、アイヌであることを拭い去りたがっていた母、そして当初はアイヌである自分に嫌悪していたが、様々な土地をまわるうちに自分のルーツを知りたくなり、その誇りを取り戻そうとしている主人公であるマウコが登場します。

それぞれの立場での苦しみが語られると、とても胸が締め付けられてるい思いでした。

 

アイヌは文字を持たない民族であるため、ユーカラといわれる叙事詩を演じたり、歌にしたりして伝承をしてきました。

故にアイヌの中には驚くべき記憶を持つべき方がいて、ヌプルクルといわれる透視や予言の能力をもつ霊能者がいたそうです。

 

マウコもそのヌプルクルをもつ人物という設定であり、目の当たりにしたエゾオオカミの剥製からのメッセージを受け取り、物語は思いがけない展開に発展していきます。

「ゴールデンカムイ」のような激しさはないですが、アイヌの神秘さを感じられるストーリーでした。

 

この本を書いた加藤多一氏は長年児童文学で著作を発表していましたが、本作は初めて大人とヤングアダルト向けに書き下ろした作品となります。

またアイヌについて取り上げたのも初となります。

冒頭やあとがきからは、著者のアイヌについての強い思いが伝わってきました。

 

なかなか衝撃的な本でしたので、機会があれば再度目を通してみたいと思ってます。

かなりレアな作品ではありますが、現在のアイヌについて知るには良い1冊と言えるでしょう。