三浦綾子最後の長編小説「銃口」は今でも印象に強く残る作品

北海道生活

一時期、三浦綾子さんの「塩狩峠」を読んで感銘を受け、その後様々な作品を読み漁りました。

ストーリーはとても重厚で人間とは何か、人生とは何かと考えさせられることも多くありました。

でも、世間では三浦綾子作品はそこまで注目されていないような気がします。

おそらく、三浦綾子作品の根底には信仰していたキリスト教の影響が強く反映されているものが多く、広く世間に馴染まないのかもしれません。

 

しかし、中にはキリスト教の要素が一切ない作品もあり、個人的に記憶に強く残っているのは、明治から昭和初期の北海道を舞台にしたものです。

「泥流地帯」や「天北原野」などの名作もありますが、今回はあえて三浦綾子さん最後の長編作品の「銃口」を取り上げます。

 

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三浦綾子の長編小説「銃口」とは

三浦綾子さんの小説「銃口」は文庫版でも上下巻に分かれており、かなりのボリュームがある作品です。

この本を手にとって、時間ができた時に4日間ほどかけて読み切りました。

 

大まかなあらすじは次のようなものです。

物語は昭和初期のこと。北海道旭川で生まれた北森竜太は、担任の坂部先生の生徒を慈しむ教育に心打たれ、教師になることを決意。そして炭鉱の町の小学校へ赴任する。困難がありながらも理想の教育を求め奮闘し、また幼馴染の芳子との愛も育み、これから幸せをつかもうとしたまさにそのとき、思いも寄らない出来事が。それは過酷な運命の始まりでもあった。
思いもよらぬ治安維持法違反の容疑で、竜太は7か月の独房生活を送る。絶望の淵から立ち直った竜太に、芳子との結婚の直前に召集礼状が届き満洲へ。そして昭和20年8月15日、満州から朝鮮への敗走中、民兵から銃口をつきつけられる。はたして竜太の運命はいかに?

 

まさに日本が日中戦争、そして太平洋戦争の真っ只中で、運命に翻弄される人々がどのように感じ、どのように生きてきたかが臨場感たっぷりに描かれています。

 

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「銃口」のブックレビュー(感想)

ストーリーについては、楽しいとか面白いといった娯楽的要素は当然ながらありません。

ですが、読み進めていくうちにどんどんのめりこみ、次の展開がすごく気になり、飽きさせません。

この辺はやはりベテラン作家である三浦さんならではでしょう。

 

物語の前半は話が濃密でじっくりと読み進めますが、後半は一転して展開が早くなり、あっという間にページをめくり続けました。

あとで知ったのですが、あとがきで三浦さん自身、後半部分は疲れが出てしまい、急いでしまったと感じていたようです。

でも、読んでいて中途半端な部分 はなく、しっかりした形で完結しております。

 

あと、三浦綾子さんの作品を読んだことがあれば分かると思いますが、どうしてもキリスト教の影響が出てきてしまうため、主人公やそのパートナーは清廉潔白とした人物が多いです。

銃口の竜太もまさにそのタイプで、なぜそんなことで悩み、大きく動揺してしまうのだと疑問に感じる部分もありました。

とはいえ、小説の世界に入りこむと、そういう人物に対して何故だか好意を持ってしまいます。

自分はすでに汚れてしまって、真面目で真っ直ぐな人間になれない分、主人公に対し敬意を持つのかもしれません。

そして、この作品も主人公竜太も例に漏れず、そのような人物なのですが、やはり好意を持つのでしょう。

 

もう1つ、三浦作品の特徴として、性根が腐った悪人がよく登場することが多いのですが、銃口では軍隊の上官や先輩もとても好意の持てる人物として描かれております。

これは銃口が、戦争がテーマで、主人公自身の心の葛藤と戦争の愚かさに焦点を当てているためで、人同士のいざこざを描く必要がなかったからと考えられます。

 

戦争を題材にした作品は、実際にその時代に生きてきた三浦さんだからこそ書けた内容ですので、一度その時代について考えるきっかけに読んでみるのも良いかもしれません。